la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
語りえぬ言葉を胸に秘めて
「跪き、脱帽して飲むべし。」
(アレクサンドル・デュマ/銘酒「モンラッシェ」についての至言)


ワインが好きだと公言して歩いていると、時々「赤と白どっちが好き?」という質問に出くわす。このシンプル極まりない質問が実はとんだ曲者で、私はそう訊かれるといつも、相手が困惑するくらいの長考をしてしまう。それは多分「男と女、どっちが好き?」というのと同じ類の質問で、たとえば「好き」というのにも色々な意味があるし、好き嫌いを分ける基準は(少なくとも私の場合は)性別ではなく個々の人柄だからだ。もちろん、赤と白との間には様々な色味のロゼワインが存在し、泡モノの中には色は白ワインでも黒ブドウ100%で造られている「ブラン・ド・ノワール(黒の白、の意)」なるものが存在しているように、人間にもきっと、「男」と「女」の間には意外に様々な濃淡のグレイゾーンがあるのだと思う。そして、人間を「男」と「女」という基準で二分してしまう視線は、きっと個人個人のいろんな魅力を、あっさり見逃してしまうものだと思う。

で、赤と白。
仮にワインを「赤」と「白」に分けてしまったとして、私が好きなのはどちらか?
手が止まる。先が続けられない。
この問題をまともに考え始めたら、一昼夜じゃ利かない。
唯一の解決方法は、好きな赤ワインと好きな白ワインをひとつずつ挙げていって、どちらが先に打ち止めになるか試してみることだろうと思う。
でもそんなことしてたら、やっぱり一昼夜じゃ利かない。

今後もきっと、同じ質問に出会う機会は多いだろう。
何か、いい答えはないものだろうか。
よく「ワイン好きは白から入っても最後は必ず赤に行き着く」みたいに言われるけれど、私は白から入って赤に転んで泡に参って再び白を見出して、とかく半端もの扱いされがちなロゼワインにも小悪魔的魅力を見出してしまったりして、今では結局「ワイン」と呼ばれるものすべてに夢中になっている有様で。
迂闊に「いやあ、赤も白も、どっちもいいんですよ」などと言い出そうものなら、今度は自分の口が止まらなくなる。「赤は魅惑的で白は魅力的。んでロゼはチャーミングっていうのがピッタリで・・・」とか何とか延々と語り出し、あげく自分でも辞書を引いて「魅惑」だの「魅力」だのという単語の意味から調べ直さなくてはならなくなるような、極めて厄介な事態に陥る。

ところで、よくワインの造り手の名前で「ドメーヌ・何とかかんとか・ペール・エ・フィス」ってあるけど、この「ペール・エ・フィス」の意味を私が知ったのは冒頭のデュマがきっかけだ。アレクサンドル・デュマというのは親子そろって小説を書いていて二人ともアレクサンドル・デュマと名乗っているので、普段は「大デュマ」「小デュマ」なんぞと呼び分けられている。『椿姫』の小デュマが「デュマ・フィス」と書かれているのはわりとよく見かけるのだけど、何かの折に『三銃士』の大デュマが「デュマ・ペール」と書かれているのを見つけて、その瞬間に「あ!」となった。つまり「ペール」が「父」で「フィス」が「子」、「エ」は「et」つまり英語で言う「and」にあたるわけで。

辞書をめくるのじゃなく、こんな風に意味を理解したことが、私には何だか嬉しかった。

ワインをきっかけにフランス語を勉強するのもいいかなと思うのだけど、今はまだ、ワインで手一杯。ま、私の脳味噌の容量から考えたら当然、か。
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