la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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起こらなかった出来事が、いつもいちばん慕わしい
「The soul selects her own society   /
then    shuts the door   
(魂は自分の社会を選ぶ   /それから   扉を閉ざす   )

(『対訳ディキンソン詩集 アメリカ詩人選(3)』亀井俊介編)


エミリ・ディキンソン。
彼女について語ることは、純化された自己について語ることだ。

さて、ディキンソンが「The soul」の代名詞所有格に「her」を用いているためにこの「魂」はディキンソン自身の魂を指すという解釈が一般的らしい。自分の社会を選んでその内側から扉を閉ざし、その他大勢の前には二度と姿を見せず、馬車が止まっても皇帝が跪いても動じないというその「魂」のあり方は、確かにディキンソン自身のものだ。けれど、この「The」と「her」との組み合わせに、私は虚を突かれるような思いを味わう。この「魂」がディキンソン個人のものならば「The soul」は「My soul」と、「her own society」は「my own society」と書かれるのが自然ではないのだろうか?

ディキンソンは何故、自らの魂について、まるでそれが別個の人格を持ったものであるかのように表現しているのだろう。そういう奇妙な距離感/乖離感を示しながら何故、その魂を「it(it’s)」ではなく「she(her)」と言い換えたのだろう。本当に、この「The soul」はディキンソンの魂だけを指すのだろうか?


ディキンソンの詩はいつも、稚拙なほどあどけなく自然を歌う(「細長いやつが草むらを」)かと思うと、まるで謎かけのように呪文めいた連なりで読む者を眩惑する(「鳥たちよりもさらに夏おそく」)。けれど、どの詩をとっても明らかなのは、そこに一切、生身の他者の姿が見えないことだ。ディキンソンの詩は草花や生きもの、特に自然の摂理を歌っているか、寓話的に己の内面を語っているか、そのどちらかだ。他者らしいものと言えば彼女が時折ふと思い出したように呼びかけてみる神様(「なぜ  あの方々はわたくしを天国から締め出すのでしょう?」)と、そしてごく稀に、影絵のように実体のない「あなた」が辛うじて恋われるのみだ(「もしあなたが秋に来て下さるなら」)。

不思議な詩人だ、と思う。
その人生はあまりにも変化に乏しい。編者のまえがきに曰く「ニュー・イングランドの片田舎に生まれ育ち、その外に出ることは滅多になかった。人生のなかばからは、家の外に出ることすらなくなってしまった」。もう少し引用すると、「そして詩を書いていたのだが、生前に印刷されたのは10篇だけ。それもすべて匿名で、自分からすすんで発表した詩は1篇もなかったと思われる」。

そうして無名のままこの世を去ったディキンソンは、彼女が描いた寓話的風景を読み解く鍵を誰にも遺さなかった。彼女がどれほど奇妙な隠遁者であったか、とか、妻子ある男性との悲恋があった、とか、実は同性愛者だった、とか、評伝は色々の憶測を飛ばす。けれどそもそも評伝というものに懐疑的な私は実はそんなことどうでもいいじゃないかと思っていて、もちろんディキンソンについて書かれたどの評伝にも作品を読み解く鍵がないとは言い切れないけれど、本当のことはディキンソンしか知らないのだから、私はそういう噂話には耳を貸さず、ただディキンソン自身の書いたものを読もうと思う。

エミリ・ディキンソン、純化された自己。
この詩人と向き合うのに、私は私の直感をもってしようと思う。
朝陽の差し込む部屋で、ひとり静かに向き合おうと思う。
理想と呼ぶには痛々しいけれど、私はやっぱり、ディキンソンを愛さずにはいられないのだ。



追記、全然関係がないのだけど、チヂミを焼くのに鶴橋で買ったチヂミ粉を使おうと思って昨夜その袋を開けたら見た目は小麦粉なのに激しくキムチの匂いがして、ヤバいかなと思ったけど引っ込みがつかなかったので(イカ解凍してネギ切っちゃった)作って焼いて食べた。今日一日ずっと口の中に後味が残ってるような感じだったのでやっぱり粉末ガーリックか何か入ってたに違いない・・・恐るべしコリアンタウン。そして事務所の皆さん御免なさい。
いつだったかどんな楽しみも分かち合う人がいないと淋しいもの云々、と諭されたことがあるけれど、「キッチンで立ったままチヂミを焼きながら焼き上がった端から貪り食う」なんていう無上の楽しみを、いったい誰と分かち合えと。
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≪この記事へのコメント≫
あわわ
分かち合うための携帯電話を紛失しました><
新しいの買ったけど。
2007/11/03(土) 14:35:22 | URL | funny #-[ 編集]
あらら
携帯電話ってそういうツールだったのか。
メールアドレスとか変わってたら当ブログ管理人までお知らせ下さいな。
2007/11/07(水) 19:30:37 | URL | サト #-[ 編集]
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