la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
劇場サポーターレポートのための原稿、その3
「私はかもめ、いや、そうじゃない」
(『かもめ』アントン・チェーホフ)


劇場サポーターの研修ということで、京都の劇団「地点」の『かもめ』を観せて貰いました。演劇は普段あまり観ない私が行ったのはもちろん、チェーホフが好きだから、なのだけど…。

詳しくは「続きを読む」以降をご覧ください。
「私はかもめ、いや、そうじゃない」

(地点『かもめ』劇場サポーターレポート)

インターネットで検索をしてみると、トレープレフ(コスチャ)が30代の地方公務員に見えた、と書いているブログにぶつかって、5日に上演された芝居の講評が6日にアップされていることにも驚いたのだけど、その比喩がトレープレフを見て私が思ったのとそっくり同じ言葉だったのでなお驚いた。なんだか冴えない地方公務員みたいだナ、と私もやっぱり思っていたのだ。首から下げてるのもピストルというよりなんかの測量機器みたいで、活舌の練習みたいな台詞回しとあいまってとっても下手な役者に見えた。最初トレープレフではなくて狂言回しの人かと思ったくらいだ。これは演出家の言葉の解釈がどうこうという問題ではないと思う、ニーナ役の女優さんはとても良かったから(こういう言葉が適切かどうかは解らないけど、言葉の「音程」の取り方が絶妙。綺麗な声、綺麗な発音)。ニーナの台詞回しだけを聞くならば、この演出家の言語感覚は魅力的に聞こえる。

ただ、どう見ても日本人な人たちが普通に「ニーナ!」とか「コスチャ!」とか呼び合うのがそもそも私には違和感があって、地方公務員が「ニーナぁ!」と叫ぶたびに笑いを堪えていた私は演劇鑑賞には元から不向きな人間なのかもしれない。
ラスト、スクリーンに投射されたカウントダウンの数字が「ゼロ」になってから銃声が響くまでにずいぶん間があって、単にズレただけならひどく間抜けだし、そういう演出なのだとしても意図が全然見えない。

『かもめ』は戯曲でしか知らないので、別に斬新な演出が嫌いなのではないけれどなまじチェーホフ好きなものだから、(装置や衣装や設定は現代風でも何でもいいけど、とにかく)台詞だけは戯曲通りの上演を観てみたかった。あの舞台では全然言葉が足りないというか、省きすぎちゃいないか? という印象で、チェーホフ特有の通奏低音のような気だるさが流れて来なくて、そのせいでトレープレフの孤独と焦燥の緊張感がちっとも浮き上がって来なかった。

チェーホフの描く人物たちというのはどこか最初から絶望してしまっているように見えて、『桜の園』にしても桜の園の未来をめぐって皆やきもきはするのだけど、結局どうにもならないというのを初めから全員が承知しているように思える。『かもめ』の場合、「かもめ」がそもそも最初から撃ち殺されてしまっている・・・。(それにしても、剥製はどこへ行ったのだろう? あの舞台上にひらひらと舞い落ちる美しい白い羽根は、チェーホフの書いたかもめの剥製とは全然、性質を異にするように思うのだけど・・・。)

「私はかもめ、いや、そうじゃない」
ニーナは言うけれど。
私はお尻が痛いんだ!!


追記。

当日行くまで会場は中ホールだと思い込んでいたので、思いがけず大ホールの明るいホワイエに入れて幸せだった。そして、入場・・・もしかしてバックヤードから? そうそう、大きいホールの舞台袖って、こういう匂いがするんだった。木とちょっとゴムの混じった、緊張感のあるわくわくする匂い。
それから。うわー、びわ湖ホールの舞台から客席を見るとこんな風なんだ、とか、パリ・オペラ座の人がここに立ってたんだ、とか、演目とは全然関係のないことばかり私は考えていた。
(※今回の公演では、舞台と仮説客席とが、大ホールの舞台上に組まれていた。本来の客席は舞台上舞台の「背景」だったのだ。)


迷ったけど、終演後のアフタートークには参加しなかった。
チェーホフへの質問なら山ほど抱えているけれど、演劇界の言語を私は共有していないので。
演劇を観るのは5~6年前に青年団の『冒険王』を観て以来で、きっと研修という機会があったのでなければ私は演劇を見ることはもうなかったと思うので、とても良い経験だった。

とは言え、仮設の客席、ほんとにお尻が痛かった!
隣に座った大きな白人男性も痛かったと見えて、しょっちゅうもぞもぞしていて気の毒だった。やっぱり舞台は普通の客席から観るのが良いな。
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