la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
最後じゃなかったボレロと、最後のボレロと
シルヴィ・ギエムが来日する。

数年前、フェスティバルホールでの公演「最後のボレロ」に行った時の苦い思い出はまだ記憶に新しい。というか、たぶんあの記憶が古びることはない。良くない意味で。

音楽が生オケではなく録音だったのは仕方がないとして、音響そのものが酷かった(ホールのせいではなく録音のせいだと思う)。おまけにプログラムに『春の祭典』が入っていて(私はストラヴィンスキーが苦手だ。実はボレロが唯一の例外というくらいベジャールも苦手だ)、堪えて観ているうちに気分が悪くなり、『ボレロ』が始まる前の休憩を挟んでも頭痛と吐き気が治まらなかった。最後の『ボレロ』、ダンサーの手だけがライトに照らされるあの幕開け、ずっと心待ちにしていた瞬間。それなのに私は頭痛と吐き気に襲われたまま、録音のラヴェルに携帯電話の振動音そっくりの音が入っていて「もしかして私の携帯?」などと不安になったりして(開演前に間違いなく電源を切っているのに)、そんな状態ではもう舞台の上の演目が何だろうと踊っているのが誰だろうと、感動なんか起きない。ぜんぶ台無し。私は完全に取り残され、舞台から「置いて行かれた」。
一緒に行った友達はちゃんと「連れて行かれた」(チケットさえあれば次の広島公演まで追いかけたい、と言っていた)ので、これはギエムのせいでもホールのせいでも東京バレエ団のせいでもなく、完全に、私のせいだ。

当時、びわ湖ホールのサポーター活動の一環で自分の観た公演のレポートを提出していたのだけれど、この日の公演レポートの最後はこんな文章になった。
「お願いですマドモアゼル・ノン、貴女のボレロをもう一度、私に見せてください・・・(「ノン」・・・)」。

マドモアゼル・ノンというのは、何事にも妥協しないために「否(ノン)」としか返事をしないと言われているシルヴィ・ギエムの愛称だ。
もう一度見せてくださいと頼んだところで、絶対に「ノン」と言われるだろうと思いながら書いたことを覚えている。

それが。
それがだ。
ギエムが本当に現役を引退するにあたって、最後の最後に、「ボレロ」を含む演目でツアーをするのだそうだ。
日本に来るのは、今年の12月。

行きたい。
何をさておいても行きたい。
ギエムの本当に最後のボレロ。
プログラムには幸い、ストラヴィンスキーの名前はない。
携帯なんか、電源を切る以前に最初から持っていかない。
ああ、でもチケット発売日は出勤日だ。
多分あっという間にソールドアウトなんだろうな。
でも数年前、女王ギエムの公演をその観客に相応しからぬ状態で観たことが、あれからずっと引っかかっていたのだ。

もしチケットが、買い手の「観たい度」に応じて割り振られるんなら、間違いなくS席が取れるだろうに。
などと、くだらない物思いをしつつ。

まあ、人事を尽くして天命を待つ、か。
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