la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
灼熱のオン・ザ・ロード
『ぼくがあげられるものは混乱した自分しかない。』
(ジャック・ケルアック/『オン・ザ・ロード』)


強い衝動と昂揚感に満ちた、無敵のロード・ストーリィ。
30も半ばになって、しかも失業中に読むべき本じゃないのは解ってる。
だけど、読んで良かった。

感想としては、「あまりにも無防備」。
サル(主人公サルヴァトーレ・パラダイス、著者ジャック・ケルアックの化身)は決して愚かではないし、無力なのでもない。
ただ、その感受性を世界に対してこうも無防備に開け放つことは、無上の歓びや至福と同時に、苦しみや痛みもまた、同じ鮮烈さをもって体感せざるを得ない、ということなのだ。それなのに、そのことに対する怖れや覚悟みたいなものが、一切、書かれていない。

ここにあるのは、ただひたすらな「疾走する生命」だ。
疾走する悲しみ、というのはモーツァルトのレクイエムに対して小林秀雄が名づけたものだけれど(ちなみに私はモーツァルトのレクイエムが嫌いだ。どことなく、これみよがしに悲しんで見せている、という過剰さを感じる)。

「ぼくがあげられるものは混乱した自分しかない」と、サルは言う。「なにもかもごちゃごちゃになって崩れはじめていた」パーティの夜に。

彼は苦しみも痛みも、ちゃんと体感している。
それでいて、躊躇したり後悔したり、自分を閉ざしたりはしないのだ。
強く、鮮やかで、憧れる。

そして、私はこの小さな爆弾=河出書房の文庫本=を胸に抱いて、思う。
「僕が僕でいられる場所は、この世のどこにも無い!」と。
追記。

灼熱の路上で意地の悪い好奇心に晒されることに、幾許かの誇らしさを踏みにじって余りある底なしの腹立たしさを私は感じた。私を知りもしない人たちが、ちらりと値踏みの視線を投げて立ち去ってゆく。
何だ、これは。
私は何かの装身具か?
身につけることが何かのステータスを表すみたいな、高価だけれど中身のないお飾りなのか?

今のところ、この痛みをどう消化すれば良いのか解らない(何せ無職だからね、あは)。
だからと言って自分を閉ざしてしまえば、それと同時に幸福にも背を向けてしまうことになるのだろう。

あまりにも無力。
そして、無力な自分を無防備に開け放つには、「世界」はあまりにも無知で残酷だ。
スポンサーサイト
Comment
≪この記事へのコメント≫
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.