la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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病み上がりのボジョレー・ヌーヴォー
ほの暗い、長いあいだ使われていなかった屋根裏部屋のような、あたたかく籠った匂い。グラスを揺らすと微かに揮発系の刺激を秘めた香りが来て(一瞬、余計なもの混ぜてないだろうな、と失礼千万な考えが脳裏を過る)、それからようやく、幾分しらじらしいフローラルな甘さが香り立つ。
ボジョレー・ヌーヴォーの中に私が去年初めて見つけた、香料っぽい甘さが主体。
それは少し経つと、見事に苺キャンディの単調な匂いに変わった。
例年のチューインガム香、それこそがヌーヴォーの証だと私が思っていたあの香りは、グラスに鼻を突っ込んでみてもまったく感じられない。

そうか、キャンディの香りという表現は、あのチューインガム香に無理やり与えられた肯定的イメージではなかったのか。つまり両者は、まったく別の要素だったのか(一年経ってようやく解ける誤解もある)。

さて、今年もボジョレー・ヌーヴォー解禁日がやって来た。
しかもこれまで毎年“世紀のビッグ・ヴィンテージだ”なぞと騒いでいたのが突然、今年は不作なのだという。
タイトルの「病み上がり」は私のことではなく、今年のヌーヴォーのことだ。
飲んでみると、確かにここ数年の中でいちばん「薄っぺらい」。
やや酸っぱく弱々しい余韻を申し訳のように残して雲散霧消する、そんな新酒。

けれど自信満々、鳴り物入りで解禁された去年(世紀のビッグヴィンテージ)の新酒よりも、私には、今年の「どうにかお届けできましたよ」という控えめな新酒のほうがずっと好印象だった。

収穫量が減り、生産量も減り、一時は価格の高騰もやむを得ないと言われていた今年のヌーヴォー。けれど生産者たちは瓶詰めした新酒のほとんどを日本への輸出に回すことで、日本市場での価格の高騰を回避した(馬鹿げた話だ)。
結果、大手スーパーやディスカウントショップが例年通りの「最安値」競争を繰り広げ、競争力を持たない中小企業の従業員(たとえば私)は少なからず、うんざりする羽目になる…。

だから私は、根本的なところで、ボジョレー・ヌーヴォーが嫌いだ。解禁日のチラシでどこが最安値を叩くかなんて正直「どうでもいい」し、その最安値の裏に何があるのかなんて知りたくもない。解禁日だといって浮かれ騒ぐのも馬鹿ばかしいし、そもそもワインとしてのヌーヴォーの品質さえ、決して肯定してはいない。

それなのに今日、雨が降っているという理由で手近なコンビニエンス・ストアに行き、私は最大手デュブッフのハーフボトルとすぐ下の棚に陳列されていたリッツクラッカー(チーズが挟んであるやつ)を無造作にひっつかんでレジに直行した。
自分がまんまと「不特定多数の消費者」の枠にはめ込まれてしまったことに苛立ちつつも、これが私の「分相応」、と皮肉な気持ちで思ったりする。

けれど、解禁日にヌーヴォーを買う、という空虚な約束事を守り続けるのには理由がある(毎年、もう来年は買わない、と心に決めるのだけど、そう言いながら実は、自分が来年も買うだろうと薄々勘づいているのだ)。
そして去年までとは打って変わって、今年の私は「これからも毎年、ヌーヴォーを買おう」と思った。そして、自分の苛立ちや皮肉な気持ちをそのままに、毎年、ヌーヴォーを買って飲んではあれこれ思索を巡らせよう、と。

ブドウが不作であったことを包み隠さずストレートに伝える今年の薄っぺらな新酒は、それでも造り手たちの懸命の努力によって届けられたものなのだ。
育てられたブドウ、醸された新酒、空輸されたボトル。不作であっても、新酒は造らねばならない。そして、市場へ届けねばならない。
何だか、そんなことを考えると、美味しくなくたっていい、と思ってしまった。

いくら不作だって我々は今年育ったブドウで今年もワインを造るんだという、決意表明のような、宣戦布告のような(それにしては弱々しいけど)、そんな「2012年ヴィンテージ」のメッセージを、私は読んだ。

…勝手にね。

追記。「Boujolais」という地名はこの十数年ずっと「ボジョレー」と表記されてきたように思うのだけれど、今年は何故か急に「ボージョレ」という表記が多数派を占めることになった。発音的には「ボ」のところにアクセントをおいた「ボゥジョレィ」だし、ヌーヴォーではない普通のAOC名として呼ぶ時には当然のように「ボージョレ」と言っているのだから(例えばクリュ・ボージョレをクリュ・ボジョレーなんて書いてるのは見たことがない)、思えば当然なのだけれど。何だか、各社いっせいに「ボジョレー」をやめて「ボージョレ」に変わったのはいったい何がきっかけなんだろう、と不思議に思う(ちなみにうちの会社は乗り遅れた。来年からは「ボージョレ」にする予定だけど)。

備忘録として。今年のお相手はポーク・ソテーにじゃがいもの付け合わせ、ついでにほうれん草もソテーにして。某スーパーのチラシに「ヌーヴォーにはビーフシチューが合います!」なんて大々的に宣伝されてたけど、病床からやっと起き出したばかりのようなこの弱々しい新酒が、後味の悪い化学調味料だらけの「シチューの素」と釣り合うものかね。

ああ、でも、人はそういう風にこの新酒を消費するのだな。
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2012/11/16(金) 06:23:18 | URL | まゆみ #-[ 編集]
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