la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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雲間から射す光の軌跡
「…、やがて私は、詩を数行読めば誰の詩かはっきりわかるのと同じように確実に、一人一人の名棋士のそれぞれの特色をその個性的な勝負の進め方のうちに判別することができるようになりました。」(『チェスの話』シュテファン・ツヴァイク)

金環日蝕とは無関係に、チェスの話。
シュテファン・ツヴァイクを読んだのはだいぶ以前のことなのだけれど、今この引用のためにちょっと頁を捲ってみてもやっぱり、引き込まれそうになる。物語にというよりは、チェスというゲームの豊饒さと深淵とに。

もとい、「私の」チェスの話。
今まで駒の中ではルークがいちばん好きだったのだけど、近頃、ビショップに心移りしている。
というのも「フィアンケット」という駒組みが気に入って馬鹿の何とかみたいにひたすらそればかり使っているうちに、「フィアンケットした時のビショップの効き筋って、何だか雲間から射す光みたいで良いなぁ」と。

そんなある日、唯一のチェス友達(というか、あまりに私がチェスチェスと騒ぐので渋々ルールを覚えて付き合ってくれている心優しき友)と対局している最中、ルークの利き筋にふと遠い昔のインベーダー・ゲームを思い出してしまった。うーん、大切な駒ではあるのだけど、一度そんな連想をしてしまうと拭い去るのは難しい。
なので今日から「どの駒がいちばん好き?」と訊かれたら、「ビショップ」と即答しようと思う。まあ、そんなことを訊いてくる人はまずいないのだけど。

一応、他の候補にもあたってみる。
例えばビジュアル的にもネーミング的にもいちばん美しい「ナイト」。確かに美しいのだけれど、「先読み」の苦手な私にとってこれはいちばん使い辛い駒だ。“盤上の詩人”ことアリョーヒンの棋譜なんか見てるとナイトがひょいひょい跳ねて思いがけないところへ飛び込んで行ったりするので、きっとアリョーヒンのいちばん好きな駒はナイトだったに違いない、と思うのだけど。
では逆に、ビジュアル的にもネーミング的にもいちばんシンプルな「ポーン」。これは、愛情を注ぐには同じものがたくさんありすぎる。
では、王様たる「キング」はどうか。これはむしろ嫌いな駒だ(まったくもう、一人じゃ何にもできないんだから!)。終盤戦ではそれなりに頼りになるんだけど、序盤~中盤では隅っこでもぞもぞしているだけの無能なヤツ。
それなら女王たる「クイーン」は。これは王様の無能さに比してあまりにも破壊力がありすぎ、派手すぎ、頼りになりすぎる(対コンピュータでたまに、ポーンが昇格してクイーンが2個になっちゃったりすると、もうすっかり相手を「苛めてる」みたいな気分になって嫌だ)。

というわけで、やっぱりビショップだ。
まあビジュアル的には、タマネギ頭の、どことなく間の抜けた奴なのだけれど。
それでも、雲間から射す光の軌跡を持つ駒には違いない。


追記、私のチェス対局は9割が対コンピュータで、使っているのはwindows vista付属の「chess titans」と、インターネット上の初心者向けチェスゲーム「チェス入門β」。この「チェス入門β」には強さの目安であるレーティングを試算する機能がついていて、何の団体にも加盟せず公式戦に出たりもしない一庶民のそれを生真面目に判定してくれるのが嬉しい。私はと言えばずっと850辺りをヘタレ的にウロウロしていたのだけど、「フィアンケット」にはまってから勝率がめきめき上がって、先日ついに1000を超えたのが自慢(まあ「初心者向け」の最高レベルが1200なので、大した強さじゃないのだけど)。

そして残りの1割、前述の「心優しき友」だが、「対人」とは言ってもまともなチェスセットも無い環境なので、ラップトップのPCにダウンロードしたフリーソフト「バリューチェス」の、画面上の二次元チェス盤(真上から見下ろした図)で対局するのだ。
ハンディキャップとして白番とマウスを相手に譲り、私は黒番で、チェス盤を逆さまに見る形で感度の悪いタッチボードを使う。基本的に私は地図が読めない女(二次元と三次元とか上下とかを互換する能力がない人間)なので、これは相当な負荷だ。

それでも、負けたことはなかった。
何せ、相手は未だにビショップを「角」と呼ぶ(もちろんルークは飛車でナイトは桂馬なのだろう。それでも敵陣に入った駒を裏返そうとしないのは、ただただ、チェスの駒が裏返すと自立しない形状をしているからに過ぎない)。
おまけにルールを説明したのは私なので(「アンパサン」は黙殺)、逆側から盤を見ていたってまだ当分は負けることはないだろうと、たかを括っていた。

それが、つい先ごろ久しぶりに手合わせ願ったところ、知らぬ間に相手がめきめき腕を上げていて、あげく盤外作戦(特にこちらの手を小馬鹿にしたようなリアクション!)まで使ってきて、うっかり(?)負けてしまった。

何だよぅ。レーティング1000超えたのにぃ。
と、駄々をこねても負けは負け。

数日後リベンジ戦で勝ったものの、集中力をフル稼働させて苦手な「長期的戦略」に取り組み、サクリファイス(捨て駒)を慎み、ポーンとルークだけのエンドゲームになだれ込んで(実に45分に及ぶ激戦の末)、ギリギリやっとのタイトル奪還。

はぁ。人の向上心ってすごいね。
私はどうしても知識や理屈に偏向する癖があるので、「体当たりで経験から学ぶ」タイプの人はすごいなあ、と思う。尊敬する。
でもまあ、尊敬はしてもやっぱり負けるのは癪なので、これからも腕を磨かなければ(そして精神を鍛練せねば)、と思った次第。
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