la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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どくしょきろく、得点つき
最近あまりに本を読み過ぎてちゃんと書評も書かずにいるので、まあ記録だけでも、と言いつつかなり長々と。
ひとつの記事をまとめるのが億劫になってきたので、これから時々こんな風にまとめて載せてしまおうかな。
ちなみに今、人生で初めて「買ったけどまだ読んでいない本がある」という状況を体験していて、困ったことに悪くない気分。

チェス小説を完全制覇?しようという試みは順調に進行中。
意外とつまらない作品が多くて面白い。

タイトルと著者名の後に百点満点の乱暴な点数をつけてみたけど、総じて得点が高いのは私もそろそろ何を読めば面白いかが体験的に解ってきていて、読む前にかなり選り好みしてしまっているから。

では、どくしょきろくへ。
『エドウィン・マルハウス』スティーブン・ミルハウザー (85点)
 『三つの小さな王国』(意味とか技巧とかを超えて趣味的に100点)で私の魂を攫った奇才ミルハウザーの処女長編。十一歳で劇的な死を遂げた「天才」エドウィンの伝記を、同い年の少年ジェフリーが書いたという設定の小説だ。物語の大半は、二人の少年の、些か風変わりながらも少年らしい日々の描写(学校生活とか初恋とか風邪とか喧嘩とかそんなようなものだけど、どれをとっても「些か風変わり」なそれ)。やがてエドウィンは小説を書き始め、ジェフリーはそれが歴史的な傑作になると確信する…。
他の書評を見て驚いたのは、終盤の決定的瞬間についての言及がほとんど通り一遍だったこと。ネタバレに配慮して伏せたのかもしれないけど、他のところでも「引き金を引いたのは誰か?」という議論が普通に成立していて、そんなことは一読すれば火を見るより明らかなのに(それが彼でなければこの小説は最初から成立しない)、と少々驚いている。
ちなみにミルハウザー作品で他に読んだのは『イン・ザ・ペニー・アーケード』(90点)『バーナム博物館』(85点)『マーティン・ドレスラーの夢』(90点)。いちばん好きなのはもちろん『三つの小さな王国』で、そこに収録されている『展覧会のカタログ』は、ある画家の展覧会のカタログに載せられた絵の題名とその解説、という体裁が「忘れ難い印象を残す物語」になってしまうミルハウザーならではの魔法(ちょっとボルヘス風の、それでもボルヘスよりずっと入りやすい)を堪能できる、私の最愛の一作。


『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』コナン・ドイル(65点)
 推理小説は好きじゃないので点数は低め。でもホームズは好き。奇矯なところとか、ヴィジュアル的にあんまり美しくないところとか、ヴァイオリンが弾けるところとか(世間のイメージとは裏腹に、意外とマッチョで格闘にも強いのが玉に傷)。


『奇岩城』モーリス・ルブラン(55点)
悪役贔屓の私だけれど、ルパン対ホームズならホームズを応援したい。「紳士強盗」と言えば聞こえは良い(?)けど結局スノッブだし(宝石とか名画とか集めて一人で悦に入る心理が解らない)、意外と人間がちっちゃいと思う(すぐ「もう泥棒なんかやめてまっとうに生きるのだ」なんて言い出すし)。でも学生探偵のイジドール君がなかなか可愛かったので、プラス5点。

『ドローへの愛』トーマス・グラヴィニチ(60点)
 ナボコフの『ディフェンス』(95点)に続く、「チェス小説めざせ完全制覇計画」の一環。世間には好意的な書評が多いのだけど、私としては60点。辛辣に言えば『ディフェンス』の劣化コピーのような印象だった。チェスの対局が、上級者同士になるとその半数がドロー(引き分け)になると知ったのは収穫。あと、装丁がシンプルで綺麗。


『盤上の敵』北村薫(35点)
 これもチェス小説と見做してオンリストした一冊。ミステリーとしては良く出来た作品なのだろう。プロットの鮮やかさは一流。後述の『Xのアーチ』に対する視点からすれば、作中の人物たちの行動に首を捻るようなこともなく、その意味ではもっと高得点をつけても良いかもしれない。ただし物語の陰鬱さが尾を引くうえに、どんな理由であれ歴然たる殺人を主人公に容認/肯定させてしまったことには同意し難い、ということで(あとチェスとあんまり関係がなかったのでがっかりした)、個人的基準での低評価。


『ここからはじめるチェス』渡辺暁(65点)
 駒の並べかたから主な定跡の紹介、エンドゲームの戦いかたまで、かなり広く浅く書いてある入門書。PCにデフォルトで入っている「chess titans」レベル3との飽くなき戦いの勝率が、この本を読んで23%から28%に上がった(これを「上達した」と言う勇気はない。そんな程度)。定跡とかちゃんと覚えたいのだけど、定跡の名前を覚えるだけで満足してしまって駄目だ。「ドラゴン・ヴァリエーション」とか「クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド」とか「ニムゾ・インディアン」とか、口に出してみるだけで楽しい。最近やっと、アクセプテッドとディクラインドの意味を覚えた。今いちばんのお気に入りは何語か解らない「ツークツワンク」(どんな手を指してもよけい不利になってしまう局面のこと)。仕事やプライベートで行き詰まった時なんかに「ああ、これはツークツワンクだ」とか呟くのが楽しい。


『8(エイト)』上・下 キャサリン・ネヴィル(60点)
 恐るべき秘術が刻まれた謎のチェス・セット「モングラン・サーヴィス」をめぐる、革命期のフランスと現代を結ぶ壮大な宝隠しと宝探しの物語。『マラーの死』を描いた画家ダヴィッドが重要な役回りで登場したり、そのマラー御本人やらタレーランやらダントンやらロベスピエールやら果てはナポレオンとその妹まで、フランス革命オールスターといった様相のサービス精神旺盛なキャスティング。それぞれの時代のヒロインは魅力的だったし脇の男性陣も悪くなかったし(欲を言えばもう少し癖のある個性が欲しかったけど)、なかなか面白かったとは思う。ただし、チェスセットに秘められた謎の正体があまりにもくだらなかった。残念。


『海を失った男』シオドア・スタージョン(90点)
スタージョンは凄い。
読んでいると波の音が聞こえ、潮の香りがし、そればかりか、その香りが地球の海のそれではなくもっと乾いた、金属と砂と異世界の香りであることも、何となく解ってしまう。結末を悟ることは絶対にできないのに、結末の気配を感じることはできる。というか既に、何と書いても見当外れか言葉足らずになるような気がして、何も書けない。そんな作家。


『最後のウィネベーゴ』『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス(90点)
 「SF界の女王」コニー・ウィリスの短編集。とにかく底抜けに魅力的で、陽性のスタージョン、といった印象(?)。収録作品のひとつ『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』は私的クリスマス・ストーリーno.1(ディケンズよりO.ヘンリより上)。単なるラブコメと言ってしまえばそれまでだけど、とにかく「底抜けに魅力的」なのだ。


『Xのアーチ』スティーブ・エリクソン(65点)
 「壮大なヴィジョンで描かれる哀切なラヴ・ストーリー」という触れ込みで、単に趣味が極めて似通っているらしい知らない人のブログにちらっと出てきたのを図書館でたまたま見つけたので借りたもの。ラヴ・ストーリーと呼ぶにはロマンティシズムに欠け清潔感に欠け、巧妙すぎ猥雑すぎる。町や風景や時代の描写は秀逸で私も難なくその世界を体験できるのだけど、登場人物がどうにも理解し難い。思考が丹念に書き込まれているエッチャーはまだしも、いったい何がしたいのか全然わからない人が多かった。
構想の凄さに幻惑されて夢中で読み切ってしまったのだけど、読後に感じるのは「消化不良」感。エリクソンの「壮大なヴィジョン」が、自分の外側を轟音と共に通り過ぎていった感じ。確かにビジョンは壮大だしスケールは大きい。でも、かねてから読みたかったトマス・ピンチョンが絶賛していると聞くと「これをそれだけ評価する人」に些か興醒めなものを感じてしまう。いや、『重力の虹』は早く読みたいのだけど。


『ゼンダ城の虜』アンソニー・ホープ(85点)
 読むのは三度めか四度めくらい。架空の王国の王位をめぐる陰謀と恋の物語、結局こういうのは私の趣味に合うのだなと思う。ちょっと王様が気の毒すぎる物語だけど、私の「悪役ナンバー1」はここに登場するヘンツォ伯ルパートだ。「接吻した場所で人殺しはできませんよ」なんて、赤面するか爆笑するかしかないようなセリフを吐いて優雅に敵前逃亡してしまうルパート君が、最高にかっこいい。女性陣はちょっと苦手な「尽くす」タイプが多いけど、でも、いつだって読めば気が晴れるし、何たってルパート君がかっこいいのだ(はいはい)。


『創造者』J.L.ボルヘス(85点)
 ぶらっと入った本屋さんで他に買うものがなかったのと、ボルヘス好きなのと、チェスの詩が載っているので。しかしこれがゼンダ城と同得点で良いのか(ゼンダ城が85点ならこちらには95点くらいつけるべきではないのか)? まあたぶん、異なるベクトルでの評価なのだ、ということでお茶を濁しておきたい。

『我らが歌う時』上下 リチャード・パワーズ(95点)
 『舞踏会へ向かう三人の農夫』から始まった私のパワーズへの傾倒は、『ガラテイア2.2』を途中棄権したことを一年くらいくよくよ思い悩むレベルになっている。ということで、こちらは期待度100%で読み始めた長編。
圧巻だった。素晴らしい小説には素晴らしい書評が山とあるので今さらなのだけど、点数だけつけて次へ、というわけにはいかないので少しだけ。
 1939年、ひとりの黒人女性とひとりの亡命ユダヤ人男性が出会い、恋に落ちる。その二人の物語と、当時の背景を思えば想像もつかないほど大胆に結婚した彼らの、三人の子供たちの物語。三者三様の肌の色を持つ混血児たちは三者三様の道を選び(長男ジョナは天才テノール歌手としてヨーロッパへ、二男ジョゼフは兄の伴奏者という立場を持て余して酒場のピアニストに転身し、末娘のルースは天賦の才を持ちながら音楽に背を向け、過激な公民権運動の渦中に身を投じる)、歴史と分かち難く結びついた彼らの遍歴が、主に二男ジョゼフの視点から語られる。
単にマイノリティであるというだけではなく、どこまでもマイノリティであることを、正面から深く深く捉えた傑作だ。1939年(ナチスの台頭、第二次世界大戦)から1992年(ロス暴動)までを、緻密にかつダイナミックに、冷徹にかつ熱烈に描き切っていて圧倒的。
歴史を言葉にすること。世界を物語で紡ぐこと。
パワーズは巨大な知性だと、つくづく思う。
まだ未読の長編があるので、読むまでは死ねない。


『夜ごとのサーカス』アンジェラ・カーター(70点)
 つまらなくはなかったけど、何だか、趣味的にどこか「合わない」感じがあった。著者名を忘れてしまったのだけど『写真の館』を読んだ時とよく似た感覚。いや、でも『写真の館』のほうが面白かったかな。

『運命綺譚』カーレン・ブリクセン(90点)
 すごく好き。特に海と嵐の、テンペストの物語が好き。ひとりの人間の物語が始まったと思ったら、いつの間にかそこに登場するもうひとりの人間の物語が始まる。不思議な幻惑。解説を読んで初めて知ったのだけど、イサク・ディーネセン(『バベットの晩餐会』)と同一人物なのね。これからもっと他の作品を読みたい。

『マゴット』ジョン・ファウルズ(60点)
 うーん、期待が大きすぎた。SFのガジェットをこんな風に描かれると、途端に陳腐な気がしてしまう。

『チェスの話』シュテファン・ツヴァイク(90点)
 ついに読んだ!という感じ。チェス小説の金字塔、ツヴァイクの『チェスの話』。図書館になくて、取り寄せできる他館にもなくて、居ても立ってもいられなくてジュンク堂に行ったら何故か平積みされてて(というか棚に平たく置かれていて宣伝ポップがついてて)、ページを開いてみることもなくレジへ直行した。『チェスの話』以外の収録作品はまだ読んでいないのだけど、楽しみ。


『四日間の奇跡』A.A.ミルン(85点)
 普段なら手に取りもしないようなタイトルの小説。でも、読んで見るとなかなか面白かった。『赤毛のアン』の延長上にあるような、少女ならではの冒険に満ちた素敵な物語。A.A.ミルンてどっかで聞いたなと思ったら、くまのプーさんの作者なのね。
ちなみに図書館でこれを借りたのは、特に探している本がない時によくやる「テーマ借り」のおかげ。以前も書いたのだけど、ひとつのキーワードを決めて、タイトルにその言葉を含む本を片端から借りてみるというやつ。今回は「タイトルに数字が含まれている小説」で、他に借りたのは以下の5冊。『トゥエルヴ』ニック・マクダネル(45点)、『十三の黒い椅子』倉阪鬼一郎(65点)、『ドン・イシドロ・パロディ六つの難事件』J.L.ボルヘスとA.B.カサーレスの共著(未読)、『中二階のある家』A.チェーホフ(未読)。未読の二作に期待している。

とまあ、今回はこの辺で。
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Comment
≪この記事へのコメント≫
サトさん、攻めてますね。
最近は偏食(ほとんどが作家買い)な俺も見習わないと。
オススメあります?
2011/11/18(金) 00:41:42 | URL | pac #-[ 編集]
いま誰かに何かを勧めるとしたらミルハウザーかパワーズですが、実は伊藤計劃がかなり気になっています。もし何か読まれてたら感想を教えてください。。
2011/11/20(日) 19:39:55 | URL | サト #-[ 編集]
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