la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
憂鬱の処方箋
「一日二回、十頁ずつ、最終頁まで服用のこと。」
(『13番目の物語』ダイアン・セッターフィールド)

そんな処方箋で医師が指定したのはサー・アーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズの事件簿』。

こんな医者がいたら絶対惚れる!と、本読みの醍醐味である「してやられた」感をかみしめる。

ブロンテ姉妹にオースティン、ヘンリー・ジェイムズ、ウィルキー・コリンズにホレス・ウォルポール。直接の言及はないけれど、ホーソーンやデュ・モーリアも多分。
そんなオマージュの数々を、随所に読み取るのが楽しい。

悲しみと痛みに満ちた物語ではあるけれど、終盤で描かれる鎮魂と再生のエピソードははまさにカタルシス(陳腐だと言われようと、これはやっぱり物語の醍醐味なのだ)。

いくぶん無茶な印象のある謎解きの部分も、それはそれで小説ならではの大胆な仕掛けだ。

少し前にフラナリー・オコナーを読んで、人間の醜さを暴くことにかけては天下一品の才能に舌を巻いた、と言うよりは舌が引きつったばかりだったので、こういう古典的な醍醐味を持つ「小説」を読めて良かった。

同時に図書館で借りた舞城王太郎の芥川候補作『ビッチマグネット』にオコナーの名が出てきたのは、これもまた本読みの醍醐味である「偶然リンク」。

それから『モーフィー時計の午前零時』というタイトルに惹かれて手に取ったのがチェス小説のアンソロジーで(私は麻雀はできないけどチェスはできる。ただ麻雀のできる知り合いはいるけどチェスのできる知り合いはいない)、収録作品の著者の中にF.ブラウンやR.ゼラズニイの名を見つけて興奮するのもまた、雑食系本読みの醍醐味。おまけにトリを飾るのはロード・ダンセイニ!

ま、ひたすら内向きな歓びではあるけれど、今のところ、こういう出会いが私の幸せ。

でも、虚構を足掛かりに現実を歩き続けることも、意外にできるものなんだなと思います。
追記。
舞城王太郎、意外にも私は嫌いじゃない。『阿修羅ガール』であまりの暴走っぷりに引いたのは確かで、芥川賞の選評で「川上弘美が褒めていて石原慎太郎がくさしていた」と知るまでは『ビッチマグネット』なんていうタイトルの本、読むことはなかった。

でも『ビッチマグネット』、わりと良かったよ。久々、物語の世界に浸りきった一日でした。
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