la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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夜更けのワルツ
切り捨てることのできない、ささやかで大切なもの。

波に洗われた白い貝殻で作った、小さなイヤリング。

逃れなければならないはずの危険を忘れて、「お嬢さん」は振り返るのだ。

何の話かって、「森のくまさん」。

お逃げなさいと言われて逃げ出したお嬢さんは、お待ちなさいと言われて足を止めてしまうのだ。
それも、「白い貝殻の、小さなイヤリング」のために。

切り捨てることのできない、小さな小さなもののために。

こういう種類のものは、ピアノ線のような細く強いテンションを持って後ろ髪を引く。
そのピアノ線は心臓をきれいに一周、くるりと巻いているものだから、微かに引っ張られるだけで鋭い痛みが胸を刺す。

それを振り切って逃げることなど、想像もできないほどに。
そんなことをすれば死んでしまうに違いないと思わせるほどに。

捨てられない何かのために危険な領域にとどまるのは、決して珍しいことではない。「お嬢さん」の愚かしくも愛らしい選択、つまり、自殺行為だと知りながら燃える建物の中へ駆け戻ってゆく人々の痛切な愛情。

胸の辺りに、この「白い貝殻の小さなイヤリング」がつかえているような気持ちで、いま私は日々を過ごしている。

連想するのは『日々の泡』の、クロエの胸に咲く睡蓮。けれど、それほど美しくはなく、それほど致命的でもなく…。

幸い「森のくまさん」は、お嬢さんとくまさんとがダンスを踊っておしまいになる。くまさんは、お嬢さんを取って喰ったりはしないのだ。

夜半、穏やかな睡魔に襲われる一時。
貝殻のイヤリングとクロエの睡蓮を思いながら、私はゆっくりと、目を閉じる。

眠りから醒めることを、待ち望んでいるのか、それとも怖れているのか。

自分の思惑とは無関係に夜が明けることを、たぶん、私は歓迎しているのだろう。

自分の胸にあるのが睡蓮ではなく貝殻であることに、安堵してもいるのだろう。
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≪この記事へのコメント≫
パウロ・コエーリョ『ブリーダ』
2010/05/12(水) 15:21:40 | URL | #-[ 編集]
パウロ・コエーリョ、たまに読む作家。『ブリーダ』未読でしたので、お薦め図書と解して読みました。数日したら感想載せます、またお立ち寄り下さい。
2010/05/18(火) 12:24:03 | URL | サト #-[ 編集]
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