la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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放浪する魂は何処へ・・・
「君は歩きに歩く。君は時間から、時間は君から去ってしまって、君は散歩から時間通りに戻ってくることは決してないだろう。」
(トーマス・マン『魔の山』)


「あてもなくふらふらと旅に出たい、どこかをさまよいたい」という欲求は、私の中にとても強く存在している。実際にはほとんど放浪してないので「放浪癖」と呼ぶと語弊があって、たぶん「放浪欲」と言うのが正しいのだと思うけれど、「欲」という言葉にもどこか違和感を覚える。

晴れた空を見て気もそぞろになってしまうあの感じ、不意に冷たく冴えた高原の空気を思い出して、身体が浮き上がりそうなくらいの切ない懐かしい気持ちに襲われるあの感じ、サンドイッチを見るとエゴン・ミュラーのいちばん安いリースリングのボトルが脳裏にちらついて・・・というのは、これはまた別の欲求か。

けれども、あてのない旅をするには私はあまりにも小心者なのだろう。未だに、行き先も日程も決めない旅、というのは国内ですらやったことがない。

「行きて帰りし物語」ではないが、やはり、帰る場所があるのとないのとでは旅の様相はまるで違ってくるはずで、スナフキンがスナフキンでいられるのは、そこにムーミン谷があるからなのだと思う(スナフキンは「帰ってくる」のではないけれど、それでも、そこは彼にとってひとつの故郷ではあるのだろう)。

同じマンションに住んでいて、飾り気のない潔い服装で駅までの道をまっすぐ歩く彼女(人から聞いた話では目下の仕事は救急車の運転なのだそうだ)は、小さい頃、スナフキンがとても好きだったらしい。スナフキンが好きで好きで、大きくなったらスナフキンのお嫁さんになりたかったのだという。

スナフキンのお嫁さんは、ムーミン谷かもしかすると他のどこかで、放浪するスナフキンの帰りを待つのだろうか。それとも、オカリナか何かを手にしてスナフキンと一緒に旅をするのだろうか。

不思議だ。私も小さい頃スナフキンが大好きだったけど、スナフキンのお嫁さんになりたい、と考える思考回路は私にはなかった。私はただ、大きくなったらスナフキンになりたい、と思っていたのだ。

放浪は、少なくとも私の放浪は、誰かと一緒にするものではない。もちろん、その時々の道連れを拒むものではないけれど。
私が目指す場所は、間違いなく自分の故郷だ。
もしかすると既に失ってしまった故郷、或いは、まだ見たことのない故郷。
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