la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
縺れた糸を、ゆっくり解いてゆくこと
「私は、かなしくてしあわせでかなしかった。」
(『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』高山なおみ)

読んだことがあったかどうか定かではなくて、何の気なしに買って帰った本。巻末に小さなレシピブックがついていて、食べものにまつわる軽いエッセイ、くらいに思っていた。

その日の夜に読み始めて、半分くらいまで読んだところで突然ぼろぼろ涙が出てきたので動揺した。

日々の出来事、眠っているときに見た夢のこと、記憶の中にある風景や言葉やシーンや人々、それから映画や音楽のことを、そっと丁寧に綴ってある本だ。それほど強く感情を揺さぶるような読み物ではないはずだったので、心が無防備だった。

私は本を閉じてベッドにもぐりこんで毛布をひっかぶってぼろぼろ涙をこぼして、そうしていると本当に「ぼろぼろ」としか言いようがないくらい後から後から涙が出てきて、 私はそのまま、わけもわからずただ押し流されるようにしてしばらく泣いた。

「かなしみ」と「しあわせ」を一緒に煮溶かした、蜂蜜みたいな、懐かしくて儚い、琥珀色のキラキラした光の感じ。

グールド、カラックス、タルコフスキー。私の大好きな人の名前が出てくる。この人の料理は前々から好きだなと思っていて、ああそれは当たり前のことだったんだ、と納得した。自分の感情が共鳴するのがわかるのだ。

この人は、かなしみをちゃんと抱きしめられる人だ。
そして、しあわせをちゃんと噛みしめられる人だ。


最近めっきり台所に立つことがなくなっているけれど、今度本屋さんに行ったらこの人のレシピを買って来よう、と思った。
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