la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
エピクロスの懸念
20090408215631
イタリアはアルト・アディジェ州のDOCワイン、使用品種はゲヴュルツトラミネール。ご覧の通り、酒石酸の結晶がコルクについてキラキラ。

行き付けの図書館(私にとって「行き付けの」という枕言葉は「居酒屋」でも「ワインバー」でもなく「図書館」にかかる)、の近くにある、家族経営の小さな酒屋さんで購入したもの。

この酒屋さんでは図書館に行った帰りにワインを買う習慣なのだけど、一度など店内に誰もいなくて、奥の方からかすかにテレビの音が聴こえていて、大声で何度も「すみませーん!」と叫びながらカウンターに代金を置いて出てしまおうかと思い始めた頃にようやく、白髪の老女がよろよろと出てきてくれた(「えらいお待たせしてすんませんなぁ」)。

品揃えは地元の清酒と酒器が中心。ワインの種類は微々たるものなのだけど、何故かマニアックなワインが多い。プライスカードは和紙に筆ペン、あまり饒舌でない簡単なコメントが逆に好ましい。

さて、普段レジにいる小柄で親しげな女性がワイン好きらしく、二言三言、言葉を交わすことがある。イタリア産のゲヴュルツトラミネールというのは町の酒屋さんではまず扱わないような珍しいワインなので、レジに持って行くと早速「ゲヴュルツトラミネール、ご存じですか?」と訊かれた。

ご存じも何も、ドイツやアルザスで極上の甘口ワインに仕立てられる、ライチやバラの香りを持つエキゾチックな品種だ。実は私は少々苦手で(人工的な化粧品の匂いを感じる)、ただイタリアでこの品種がどんなワインになるのか知りたくて選んだのだ。

ドイツ語とイタリア語が併記されたラベルには辛口か甘口かの明記はなく、ただアペリティフやデザートに、とあって、夕食に飲むつもりでいた私は少し不安になる(甘すぎると困る)。でもまあ、何事も舌の経験値だ。

店員さんはゲヴュルツの素性も特徴もよく知っていて(「本来はドイツの品種で、ライチの香りがして私もすごく好きなんです」)、何よりワイン好きで、そしてワイン好きの客を歓待してくれる。

きっとワイン好きのお客がある程度はついてるのだろうけど、でもその小さなショップにはセラーもなく、高価なシャンパンは棚の上に追いやられたまま所在なさげだ。

何となく切ない気持ちになって、会話もそこそこに私はお店を後にした。

買ったワインはほぼ辛口。ゲヴュルツらしい甘い香りとふくよかさを除けば残糖はほとんど感じない。私の苦手な香料っぽさもなく、もちろんゲヴュルツ嫌いの私としては「好きなワイン」だとは言えないのだけど、でも、決して悪くはなかった。

今の世の中、ああいう小さなお店が生き残るのは難しいかもしれない、と思う。自分が消費者として少数派なのは解っているし、百貨店に入っていたワインショップが呆気なく撤退してしまったのも見ているので、とても楽観的にはなれない。

でも、ああいう酒屋さんが長く営業してくれれば良いな、と、心底そう思った。
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