la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
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十月の階梯(オクトーバー・ステップス)

「(他の者たちは図書館と呼んでいるが)宇宙は、真ん中に大きな換気孔があり、きわめて低い手すりで囲まれた、不定数の、おそらく無限数の六角形の回廊で成り立っている。」
(『バベルの図書館』ホルヘ・ルイス・ボルヘス)


昨夜、旅の夢を見た、と思う。
この部屋では時折、こと静かな夜には少し離れた線路を走る列車の音が聞こえるので。
たぶんそのせいで。

pass・・・by, pass・・・by,
from noWhere to noWhere・・・through nowHere,

向かう先がどこであれ、そこには夜明けが待っている。
夜から・・・朝へ。今日から・・・明日へ。
夜を過ぎて。ここを過ぎて。
(私は声を上げようと息を吸う、途端、甘い郷愁の匂いが私の胸を塞ぐ。一瞬の追憶。思慕、ためらい。その驚きがまだ私を去らない間に、列車の音は遠ざかり、消えてゆく。
静寂・・・ざわめき・・・そしてまた静寂。私は夜の中に取り残される。)
車窓、パサージュ、煉瓦の壁の記憶。
カーテンの向こうを横切る影、バレリーナのチュチュ。
砂糖菓子のファサード。
ああ、ここは異国の街だ。
旅の夢。漂泊する魂の夢想。眠る身体を尻目に夜汽車に飛び乗り(そのはずみに貨物のコンテナの角でしたたかに尻を打つ)、こだまする汽笛に紛れて調子外れの歌声を夜空へ放つ(どこかの海に響く茫洋とした霧笛に呼応して)。

旅情と郷愁とは何故こうも似ているのだろう。甘く憂わしい心のざわめきに気が遠くなる。この秋、私はとうの昔に出会っていてしかるべきだった言葉たちに、長い停滞の後でようやくめぐり合った。タゴール。ガルシア・ロルカ。そして(意外にも)三原順。私はいま彼ら/彼女らの、言葉の海のほとりに立っている。

日暮れ時、その海はベタ凪ぎに凪いでいる。
自分にとって世界がまだまだ未知数であることを、私は途方もなく幸せに思う。そしてまた同時に、途方もない恐怖を覚える(何故ならその海の深さと内に秘めた力を思うと、難破する確率はかなり高いから)。

そう、夜汽車は通過する、「ここは駅ではない」と。
私がここを(そしてすべての駅を)過ぎてゆくのだろうか、それとも、ここが(そしてすべての夜汽車が)私を過ぎてゆくのだろうか?

心臓に刺さった刃が冷たい。
(ひとときの休息、それすら恋愛という対価なしには得られないものなのか?)
早くも難破寸前の船。脱線寸前の夜汽車。
数日前の不安と孤独と恐怖の余韻を、私はまだ引きずっている。外から誰かの悲鳴が聞こえる。世界は一時たりとも平安ではいてくれない、そして、この世の何物とも不可侵条約など結べはしないのだ、と私は悟る。

ただ、今は静かに。
どうか私を眠らせて下さい。
とりあえず明日の朝には(嫌々ながら)起きて仕事にゆくことを約束しますから、どうか、今だけは。

追記、武満徹の文章に惚れて『ノヴェンバー・ステップス』のCDを買ったのに、私の耳には怪談のBGMにしか聴こえなくてまたまた落ち込み中(一人で夜に聴くと真剣に恐い)。

もひとつ追記、これは数日前の深夜に書いた文章。今は知人宅へオカリナ練習に行った帰りで、わりと明るい気持ち。雨だけれど明るい気持ち。
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