la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
どんな春よりなお春らしく
三方に窓のある部屋。
北側と南側に大きめの窓、西側には横に細長い窓が二か所。
そんな部屋だから夏の西日には心底、体ごと閉口するけれど、冬の終わりの西日ときたらこの美しさはどうだろう。

シャンパンゴールドの光が磨り硝子と麻のカーテン越しにきらきらと輝き、沈みかけの太陽の、名残りの熱が肌に届く。
光の移ろいを言葉に移そうと虚しい努力をするうちに、顔を上げれば窓はすっかりピーチベリーニの色に染まっている。次に顔を上げたときにはすうっと色褪せて雪空の冷ややかなブルーグレイに変わり、そして今度は上から下へ、菫色から朱鷺色への息を呑むようなグラデーション。

このところ、ひと雨ごとに暖かくなり、家の近くの土手や空き家の庭ではふきのとうが顔を出している。そのほろ苦い香味は、私が春を待ちわびていたのはこれのためだったのかと思うほど懐かしく、私は切ないような胸の痛むような気持ちでそれを味わう。
今日は二回目の収穫で「ばっけみそ(ふきのとう味噌)」をたくさん作った(五十嵐大介の『リトル・フォレスト』を読んで以来、「ふきのとう味噌」ではなく「ばっけみそ」と呼ぶようになった)。ジャムの空き瓶ひとつぶんと、少しずつラップに包んで冷凍するぶんと。

昨日からは寒気が戻り、ずいぶん冷え込んで雪が降ったりしたけれど、春の訪れはいつもそんな風だ。人を油断させておいて急に身を翻したり、かと思うといきなり懐深くへ飛び込んで来たり。

ともあれ、春は、確実に来る。
それは誰にも、かの冬将軍にも止められない。
冷たい風の隙をつくようにして届く日差しの暖かさ。
少しずつ緑色を取り戻してゆくタイムの葉。
柔らかく密度の濃いフェンネルの新芽。
いつも冬を待たずに枯れてしまうチャイブの、健気なような剽軽なような、不意の復活。
春の兆しが少しずつ、春の証に変わってゆく。
うん、まあ、畑に芽吹いてくる雑草たちも。

何だか今年の春は、これまでのどんな春より、ずっと春らしいような気がする。

ああ、春っていいなぁ。
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