夜の十時。
大通りから一歩路地に入ると、ひょろりとした棒きれのような小さな人影が、何やらたたんだ傘のようなものを捧げ持っているのが見えた。
ゆっくり、前後にフラフラ揺れながら、傘に似た何かを垂直に支えて、長く尾を引く細い声で歌っている。アー、ともハー、とも聴こえる発音で奇妙な音階をたどり、どうやら故郷の星と交信しているらしい。
不思議な生きものに出会ってみたい、と常々思ってはいたものの、いざ現実に遭遇してみると怖い。あまりにも怖い。川上弘美みたいに一緒に写真を撮るなんて、絶対ムリ。
思わず早足になる私に、幸い相手は気づかないらしい。話し掛けてきたらどうしよう、と思いながら前を通りすぎてちらりと肩越しに振り向くと、もうそこには何もいない。ただ、黒い傘立てが放置されているのみ。
すごくドキドキした。
ある初夏の夜。
大通りから一歩路地に入ると、ひょろりとした棒きれのような小さな人影が、何やらたたんだ傘のようなものを捧げ持っているのが見えた。
ゆっくり、前後にフラフラ揺れながら、傘に似た何かを垂直に支えて、長く尾を引く細い声で歌っている。アー、ともハー、とも聴こえる発音で奇妙な音階をたどり、どうやら故郷の星と交信しているらしい。
不思議な生きものに出会ってみたい、と常々思ってはいたものの、いざ現実に遭遇してみると怖い。あまりにも怖い。川上弘美みたいに一緒に写真を撮るなんて、絶対ムリ。
思わず早足になる私に、幸い相手は気づかないらしい。話し掛けてきたらどうしよう、と思いながら前を通りすぎてちらりと肩越しに振り向くと、もうそこには何もいない。ただ、黒い傘立てが放置されているのみ。
すごくドキドキした。
ある初夏の夜。
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