la petit cuvee

“プチキュベ”と、舌ったらずに発音して下さい。 くれぐれも、「ヴェ」と下唇を噛まぬよう・・・。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:-- | スポンサー広告 | Trackback(-) | Comment(-)
幻覚体験☆ご近所ツアー
夜の十時。
大通りから一歩路地に入ると、ひょろりとした棒きれのような小さな人影が、何やらたたんだ傘のようなものを捧げ持っているのが見えた。
ゆっくり、前後にフラフラ揺れながら、傘に似た何かを垂直に支えて、長く尾を引く細い声で歌っている。アー、ともハー、とも聴こえる発音で奇妙な音階をたどり、どうやら故郷の星と交信しているらしい。
不思議な生きものに出会ってみたい、と常々思ってはいたものの、いざ現実に遭遇してみると怖い。あまりにも怖い。川上弘美みたいに一緒に写真を撮るなんて、絶対ムリ。

思わず早足になる私に、幸い相手は気づかないらしい。話し掛けてきたらどうしよう、と思いながら前を通りすぎてちらりと肩越しに振り向くと、もうそこには何もいない。ただ、黒い傘立てが放置されているのみ。

すごくドキドキした。
ある初夏の夜。
スポンサーサイト
美酒礼賛(長文)
「こんな人が働いているメーカーにまずいワインはない」
(『ヨーロッパ ワイン夢紀行』宇田川悟)


故・麻井宇介氏の名著『ワインづくりの思想』を読んでからというもの、日本のワインづくりの現場を見に行きたい、とずっと思っていた。もちろんただの観光客としてだけれど、ここはと思うワイナリーを見学に行って、そこで働いている人と話をしてみたい、と。そう思いはじめて一年足らずで実行に移したのは、思いつきが常に思いつきで終わる私としては奇跡的な行動力と言えるかもしれない。半ば笑顔、半ば呆れ顔の友人いわく、「よっぽど好きなんやなぁ」。

というわけで、勝沼ワイナリー訪問記です。


200805212030000.jpg

左から丸藤葡萄酒「シャリオ・ドール'87」、ルミエール「石蔵和飲'06」、勝沼醸造「アルガーノ・ボシケ'06」。
再び、リトルネロについて
「『かもめも離婚するって知ってた?』」
(『アメリカ 非道の大陸』多和田葉子)

この本は別に9.11以来のアメリカ批判本ではなく、私たちが白昼夢的に体験するアメリカ旅行の断片を描いた小説だ。

とても好きな本なのだけど、今回は、本文はそれとは関係ない。

理不尽なことに逐一抗議するより、諦めて耐える方がずっと楽だということ。けれど耐えるということは、自分で選んだはずの道を他者に強いられたものに変えてしまうということ。

だから私は、誰憚ることなく誇りやかに宣言する。

「A=あえて、K=空気を、Y=読まない」と。

権利を守るための闘争。あなた方が「忍耐」という名のもとに放棄してしまったその闘いを、私が担おう。背後から撃たれることも覚悟の上で、顔を上げて歩こう。

AKY。今の世の中でそんな言葉が囁かれ始めたことを、私はとても嬉しく思う。
唇には歌を。心には、他者の刃を受け止める強さを。そして地には平和を、人には愛を。

牧歌的に聞こえるその理想は、実は忍耐より過酷な闘争を人に課す。けれど、私のゼロポイントは常にそこにあるのだ。

つまり、それが「暗闇をひとりで歩く」ということ。
私の唇に浮かぶ言葉はただひとつ。

リトルネロ。

世の中のすべての悪意に。私はあなたを憎まない。ただ、心底からの哀れみを覚える。他者の幸福と連動しない幸福など、まやかしに過ぎないのだから。
ゼロポイント
ゼロポイント。
電子楽器テルミンのチューニングで、基本になる右手の位置。
テルミンは周囲の環境に左右されやすい、とても不安定な楽器だ。だからスイッチを入れるたび、丁寧にチューニングして「ゼロポイント」を決め直さなくてはならない。
私が「まるで人生みたいにシビアな楽器だ」と思ったのは最初は別の理由で、音程を決める右手の位置がほんの一ミリ揺らぐだけでまったく音楽にならないその微妙さのためだったのだけど、今はそれよりもこの「ゼロポイント」が、自分の立ち位置を常に決め直さなくてはならない日々の不安定さに似ていると思う。

ゼロポイント。
もしかすると人生は「続いてゆくもの」ではなくて、朝が来るたびに再構成しなければならない「一日」の断続的な集積なのかもしれない。
そしておそらくはテルミンが人生に似ているのではなく、人生がテルミンに似ているのだ。
Designed by aykm.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。